注意欠如・多動性障害(ADHD)
最近、ADHD(注意欠如・多動性障害 Attention Deficit Hyperactivity disorder)を代表とする発達障害の認知が進んでいます。
「仕事のミスが多い」「時間に遅れる」「仕事で信頼を得られない」などがあり、上司や同僚から「あなたはADHDかもしれない」と指摘されたり、ご自身で「私はADHDなのかもしれない」と疑い、受診されるケースが増えております。
ADHDとはどのような障害なのか、このページで「大人のADHD」についてわかりやすく説明したいと思います。
ADHDとは
ADHDとは、上記の通り「注意欠如・多動性障害」と訳され、注意の障害と多動の傾向が主な症状である障害です。
ADHDの割合は?
ADHDの有病率は約3%と推定されています。
うつ病患者とほぼ同数で、その総数は日本国内で約300万人~400万人と決して少なくない数です。
ADHDは子供だけの病気ではない!
ADHDは大人になってから出現するものではありません。
不注意、多動性、衝動性という症状は子供のころからあり、悩まされています。
子供のころはその子の性格、特性と思われ、寛容に対応されてきていたのに、大人になって仕事などの責任が重くなることにより症状が表面化する場合が多いです。
ADHDにはどのような症状がありますか?
大人になると目に見える多動性はおさまてってくることが多く、不注意の症状が目立つものが多いです。
不注意に関する症状
<小児に見られる症状>
- 注意を持続するのが困難(勉強・遊び)
- 気が散りやすく、忘れっぽい
- ケアレスミスが多い
- 人の話を聞かない
- 課題などを順序ただててできない
- 整理整頓ができない
- 物をなくしたり、置き忘れたりする
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<成人に見られる症状>
- 注意を持続することが困難(会議、読書、事務処理)
- 先延ばしにする
- 仕事が遅い、非効率的
- 混乱しやすい
- 時間管理が下手
- 片付けが苦手
- 物をなくしたり、置き忘れたりする
- 約束を守れない
多動・衝動性に関する症状
<小児に見られる症状>
- 過度におしゃべりをする
- 落ち着いて座っていられない
- 静かに遊んだり、課題に取り組むことができない
- あちこち動き回ったり、体をそわそわ動かす
- 走り回ったり、よく考えずに行動したりする
- うっかり答えを口に出す
- 順番を待つことができない
- 他人に口をはさんだり、邪魔をしたりする
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<成人に見られる症状>
- 過度におしゃべりをする
- 内的な落ち着きのなさ
- 感情が高ぶりやすい
- 自ら多忙な仕事を選ぶ
- 薬やアルコールへの依存傾向
- 目的のない動き(貧乏ゆすりなど)
- 易刺激的、短期
- 思ったことをすぐに言う
- 運転中のスピードの出しすぎ、交通事故
- 喫煙・カフェイン摂取
- リスクのある性行動
- 衝動買い
引用:岩波明. 大人のADHD.ちくま新書, 2015
大人のADHDをうまくコントロールするには?
薬物治療
ADHDの症状を抑える薬があります。
それらを用いることにより症状を軽減することが可能です。
また、ADHDにより、その他の病気(うつ、適応障害など)を併発している場合にはそれらに対する薬物治療が行われる場合もあります。
心理教育療法
薬物治療も大変重要ではありますが、生きにくさを改善していくためには薬物以外の治療も非常に重要になります。
まず患者さん自身、家族、会社の人などにADHDという病気の特性を理解してもらうことです。
ADHDについて知ることにより、今までの起こってきたトラブルが性格、怠けからくるものではなく病気の特性から来ていたものであるということがわかると思います。
また病気からくる症状への対処方法を考え病気とうまく付き合っていく方法を学ぶことも非常に重要です。
お伝えしたいこと
発達障害というと何らかの能力の成長、発達に障害があり人より劣っていることだと理解している人は多いようです。しかしADHDという発達障害は病気というよりはその人が持った極端な傾向であるというとらえ方もできると思います。極端な傾向であるため、実社会で非常に生きにくさを感じ、その他の病気を併発されている方も少なくありません。しかし自身、家族、周りの理解で新たな生きやすさを見つけることができている人も少なくありません。一度ご相談いただき、一緒に対処方法を考えていければと思います。