糖尿性腎症
糖尿病は腎臓に悪いと漠然と理解されている方は多いと思います。糖尿病の治療に通ってはいるものの自分の腎臓が病気のステージとしてどの段階なのか、いまどのような治療をされているのかなかなか理解するのは難しいと思います。
今回は糖尿病の3大合併症の一つである糖尿病性腎症について解説したいと思います。
糖尿病性腎症とは何ですか?
糖尿病は細い血管、神経を傷害します。
網膜症、腎症、神経症といわれる三大合併症を引き起こすことが知られております。
糖尿病性腎症はその一つで血糖のコントロール不良な状態が長く続くことにより、腎臓の中の小さな血管を傷害し、腎臓の機能低下を招くことが知れております。
糖尿病性腎症にはどんな症状がありますか?
糖尿病を発症してから10年から15年は全く症状がありません。
むくみ、全身倦怠感などの症状【表1】で示した第3期後半から起こり、ここまで進行すると非常にコントロールが難しくなってきます。
そのため症状の無い第2期までに治療を行うことが重要と考えております。
病期 | 尿アルブミン値(mg/gCr) あるいは 尿蛋白値(g/gCr) |
GFR(eGFR) (ml/分/1.73m2) |
第1期 (腎症前期) |
正常アルブミン尿 (30 未満) |
30以上注2 |
第2期 (早期腎症期) |
微量アルブミン尿 (30~299)注3 |
30以上 |
第3期 (顕性腎症期) |
顕性アルブミン尿 (300 以上) あるいは 持続性蛋白尿(0.5以上) |
30以上注4 |
第4期 (腎不全期) |
問わない注5 | 30以上注4 |
第5期 (透析療法期) |
透析療法中 |
注1: 糖尿病性腎症は必ずしも第1期から順次第5期まで進行するものではない。本分類は、厚労省研究班の成績に基づき予後(腎、心血管、総死亡)を勘案した分類である (URL:http://mhlw-grants.niph.go.jp/, Wada T, Haneda M, Furuichi K, Babazono T, Yokoyama H, Iseki K, Araki SI,Ninomiya T, Hara S, Suzuki Y, Iwano M, Kusano E, Moriya T, Satoh H, Nakamura H, Shimizu M, Toyama T, Hara A, Makino H; The Research Group of Diabetic Nephropathy, Ministry of Health, Labour, and Welfare of Japan. Clinical impact of albuminuria and glomerular filtration rate on renal and cardiovascular events, and all-cause mortality in Japanese patients with type 2 diabetes. Clin Exp Nephrol. 2013 Oct 17.
[Epub ahead of print])
注2: GFR 60 ml/分/1.73m2未満の症例はCKDに該当し、糖尿病性腎症以外の原因が存在し得るため、他の腎臓病との鑑別診断が必要である。
注3: 微量アルブミン尿を認めた症例では、糖尿病性腎症早期診断基準に従って鑑別診断を行った上で、早期腎症と診断する。
注4: 顕性アルブミン尿の症例では、GFR 60 ml/分/1.73m2未満からGFRの低下に伴い腎イベント(eGFRの半減、透析導入)が増加するため注意が必要である。
注5: GFR 30 ml/分/1.73m2未満の症例は、尿アルブミン値あるいは尿蛋白値に拘わらず、腎不全期に分類される。しかし、特に正常アルブミン尿・微量アルブミン尿の場合は、糖尿病性腎症以外の腎臓病との鑑別診断が必要である。
【重要な注意事項】 本表は糖尿病性腎症の病期分類であり、薬剤使用の目安を示した表ではない。糖尿病治療薬を含む薬剤特に腎排泄性
薬剤の使用に当たっては、GFR等を勘案し、各薬剤の添付文書に従った使用が必要である。 (2013年12月 糖尿病性腎症合同委員会)
出典;日本腎臓学会
どのような検査を行いますか?
糖尿病性腎症の診断は糖尿病にかかっている期間、
- 血液検査(クレアチニン、eGFR、HbA1c)
- 尿検査(尿中蛋白、アルブミン)、
- 腎臓のエコー検査
を行い診断します。
特に上述した通り糖尿病性腎症は、尿に出てくる蛋白(糖尿病初期はアルブミン)によって評価されるため尿検査が非常に重要な検査になります。
最低三か月に一回は尿検査を受けることが推奨されております。
糖尿病性腎症の予防や治療はできますか?
病気の進行を防ぐためには糖尿病の良好なコントロールは言うまでもなく、血圧、脂質、生活習慣の改善が大きなポイントとなります。
糖尿病のコントロール
・HbA1c 6.9%以下を目標に
(血糖コントロールは重要であるが低血糖を起こさない薬物選択)
血圧・脂質の管理、生活習慣の改善
- 血圧の管理 : 130/80未満
- 高脂血症の管理
LDL-コレステロール:120mg/dl未満
(心血管病の合併がある場合は、LDL-コレステロール<100mg/d)
>> 脂質管理目標値について
- 生活習慣の改善
- 肥満の解消
- 禁煙
- 塩分制限(1日6g未満)
当院からお伝えしたいこと
私が外来で糖尿病の方に強調しているのは定期的な尿検査をして尿の蛋白を測りましょう!ということです腎機能障害を採血よりも早く見つけ出すことができ、検査の負担もほとんどないため大変良い検査と考えているからです。
糖尿病は少し厄介な病気ですが適切に管理、治療を行えば付き合っていける病気と考えております。クリニックに来ていただき相談いただけると様々なことをご提案できると思います。
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