肥満症
体重が重いことに悩みを抱えている方、それがもとで医学的な介入が必要となっている方は、現代では少なくありません。
ここでは体重が単に重いということに焦点を充てるのではなく、それが原因で起こる病気の予防、治療という観点からお話ししたいと思います。
肥満と肥満症の違い
肥満とは体格指数(BMI)が25以上のものと定義され、
肥満症は肥満に起因した病気があるかもしくはその合併症が予測され医学的治療の必要なものと定義されています。
簡単にまとめると、以下のようになります。
肥満 | 単に体重が重いだけで医学的な治療の対象とはならない |
肥満症 | 体重が重いことが原因の健康障害を合併、もしくは今後合併する可能性が高いため医学的な介入が必要な疾患 |
肥満症診断はどのように行われますか?
肥満症は、BMIの値と健康障害や内臓脂肪蓄積の有無によって診断され、下図のようなフローで診断していきます。
出典: 日本肥満学会, 肥満症診療ガイドライン2022
肥満症の治療方針は?
最新の「肥満症診療ガイドライン2022」では、肥満症の場合、体重の3%以上減量すると、健康障害が改善するといわれています。
高度肥満の場合は、合併する健康障害に応じて体重の5%~10%減量を目標とします。
当院でもガイドラインに従い、食事・運動・行動療法を行い、目標を達成できたかどうか評価します。
目標が達成できない場合は薬物療法、外科的治療(適応を考慮し専門機関に紹介)を考えていきます。
出典: 日本肥満学会, 肥満症診療ガイドライン2022
薬物治療について
ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド)
ウゴービの成分であるセマグルチドはGLP-1受容体作動薬で糖尿病の薬として別の薬剤名で用いられております。GLP-1は食欲を抑えたり、満腹感を高めたりする作用があります。
効果は認めれれており10%以上の減量効果が報告されております。しかし胃の運動を抑える作用があるため胃もたれ、吐き気などの副作用が少なからず起こることが報告されております。
<適応>
肥満症の方で、高血圧・脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限ります。
- BMIが27以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
- BMIが35以上
1. BMIが27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
●保険適応になる身長・体重のライン
-
- 150cm → 60.7kg 以上
- 155cm → 64.8kg 以上
- 160cm→ 69.1kg 以上
- 165cm→ 73.5kg 以上
- 170cm → 78.0kg 以上
- 175cm → 82.6kg 以上
●肥満に関連する下記健康障害のうち2つ以上を有する
- (1) 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
- (2) 脂質異常症
- (3) 高血圧
- (4) 高尿酸血症・痛風
- (5) 冠動脈疾患
- (6) 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- (7) 非アルコール性脂肪性肝疾患
- (8) 月経異常・女性不妊
- (9) 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- (10) 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
- (11) 肥満関連腎臓病
2. BMIが35以上の高度肥満
●保険適応になる身長・体重のライン
-
- 150cm → 78.7kg 以上
- 155cm → 84.1kg 以上
- 160cm → 89.6kg 以上
- 165cm → 95.2kg 以上
- 170cm → 101.1kg 以上
- 175cm → 107.2kg 以上
サノレックス錠(一般名:マジンドール)
本薬剤はBMI35以上の高度肥満患者に対して、食事療法および運動療法の補助療法として用います。投与期間は最長3か月となっており、1か月で効果が見られない場合は中止します。口喝、便秘、悪心、睡眠障害などの副作用の発生が少なくなく、それを理由に中断する場合もあります。残念なことにしっかりとした体重減少も見られないため一般的に用いられることは少なくなっております。
お伝えしたいこと
肥満、体重が重いと「自己管理能力が低い」という偏見にさらされている場合も少なくありません。
体重が増える原因はそれだけではなく体質、生育、社会的背景など様々な要因が影響を及ぼします。
単に自己管理能力が低いと決めつけられ医学的な適切な治療機会を失うのは非常に残念なことと考えております。
適切に問診、治療導入させていただき健康被害を少ないもにできればと考えておりますので一度ご相談ください。